昭和5年の永平寺大遠忌と歓待事業
永平寺境内
福井県の鳥瞰図作成に大きな影響を与えたものの一つに昭和5年の永平寺大遠忌(永平寺二祖狐雲禅師の650回忌)がある。
孤雲禅師とは曹洞宗開祖道元につかえた名僧で永平寺の二世である。 その大遠忌が昭和5年4月から5月に開催され、全国から数十万人が参拝客が来県し、福井県の観光と鉄道に大きな影響を与え、各種鳥瞰図(特に鉄道バスなど交通関係)はこの時期が作成されたのである。
書籍では字数の制限で、大遠忌について簡潔な記述となっているので、ここではその内容を少し紹介しておこう。
この大遠忌に合わせ、永平寺は伽藍の整備はもとより、宿坊のエレベータ設置などに取り組んだことは本文でも触れた。
福井市もこれに合わせた博覧会の実施を決定したが、当時は浜口内閣のもとで井上準之助蔵相が緊縮政策、産業合理化を断行しており、内務省の反対や市予算確保の関係で断念し、代って福井商工会議所が県と市の助成を得て歓待会や優待事業を実施することとなった。
会期中、歓待会(会長・坪川信一だるまや社長[前商工会議所事務局長])は駅前に歓迎アーチを立て、駅前周辺の家屋は軒下に提灯を吊して歓迎ムードを演出した。商業者も店舗の改装などに取組むなど過去にない観光客受入れ体制を敷いた。
商品陳列所(三秀園)
行事としては、福井駅前近くの実科女学校を会場にした県特産品展覧会と、県商品陳列所(三秀園、鳥瞰図に描かれているので参照のこと)を会場にした一部海外を含む全国都道府県の特産品の展示即売会の実施。
優待事業としては、来訪者(優待券所持者)の福井市内での入浴、理髪、喫茶飲食、映画館観覧は無料に加えて、福引は破格の金額が設定された。
期間中は各界の著名人を招いての加賀屋座で演劇、舞踊、演奏、独唱会など様々なイベントが実施された。
来福した著名人としては
- 石井舞踏団(漠をはじめ妹の栄子ら20名)、
- 築地小劇場は30名で「西部戦線異常なし」を演じた。
- 一世を風靡したオペラ歌手藤原義江、ソプラノ歌手関根敏子、
- 福井と関係の深い奇術の松旭齊天勝
など多数にのぼる。
早稲田大学のブラスバンドの演奏や野球部が参加した野球大会も実施されている。
また款待会は、今のコンベンションビューロの役割も担い、開催期間に合わせて各大会の誘致にも取り組んでいる。
福井商工会議所にとっても大正15年のロシア博覧会以来のイベントとなったのである。